猿手の探索 レポート3 類人猿の場合

京都大学医学部人間健康科学科
青山朋樹

最後に最もヒトに近い類人猿の手について観察を行います。

まず代表的な類人猿であるゴリラの手を見てみましょう。ゴリラ舎の前にはゴリラの手のレリーフが置かれていました(図3-1-1)。ゴリラの手はやはり大きい!ヒトの手にとても似ておりますが、母指球のふくらみは小指球より小さく、指の長さも親指が短いのが観察できます(図3-1-1)。

ゴリラはナックルウォークという指の背中部分を地に着けた四足歩行を行う事が有名です。この歩行は前回のアカゲザル(猿手の探索 レポート2 真猿~類人猿の場合)が手を反らして掌を地に着けて歩くのとは対照的です。奥の方からゆっくりとナックルウォークで歩いてくるゴリラが、おもむろに食べ物を摘まみ上げゆっくりと口に運びました(図3-1-2)。何とも貫禄があり、大きな指で「摘まみ」をしていました。また枝から葉を摘み取るときにもテナガザル(猿手の探索 レポート2 真猿~類人猿の場合)が葉だけを摘み取るのとは異なり、枝をしっかり押さえて、扱くようにして葉を摘み取っていました(図3-1-3)。食べる時の姿勢などもヒトにより近いように思えます。またタイヤを握って遊んでいる姿は車の運転をしているようです(図3-1-4)。このことからゴリラは真猿よりもさらに進化して道具を使うことに手を活用しているように思えました。

この日は有名なドラミングを見ることはできませんでした。ドラミングは掌で胸を叩くことでコミュニケーションする行為のようですが、ゴリラにおいてはコミュニケーションの手段としても、手を活用しているのがわかります。

 この分だとさらにヒトに近いチンパンジーはどのような手の活用をしているのだろうと期待が膨らみます。しかしながらぽかぽかと暖かいからでしょうか。気持ちよさそうに寝そべって、一向に目を覚ます気配がありません(図3-2-1)。顎に手を当てて、なんとも気持ちよさそう。ゴリラと同様に親指は短く細い。掌を見ることができなかったので、母指球の確認はできませんでした。

本日のレポート結果

最もヒトに近い類人猿は道具を使うことに手を活用していた。

これまでの結果を通して

サルにおいても「摘まみ」は可能ではあるが、ヒトの「摘まみ」とは少し違う使い方をしていた。違う形で手の使い方を進化させている可能性もあり、今後も調査を継続する必要がある(図3-2-3)。(*ステマではありません)。