小指症 Brachydactyly

京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻
青山朋樹

自分の小指の長さが短いということに気がついたのは、医学生の頃に形成外科の講義で小指症(Brachydactyly)という名前を聞いたときです。環指(一般的にはくすりゆび)の遠位指節間関節(一般的には第一関節)よりも小指(一般的にはこゆび)の先端が短い時に小指症と呼ぶようです。「症」という名前がついているので、疾病のように聞こえますが、これは20人に1人くらい(調査報告では3-21%※1)に生じる比較的頻度の高いminor anomaly(小奇形)の一つとも聞きました。「奇形」という言い方もどうかな、とその時には感じ、正直なところ知りたくなかった、というのが本音です。

小学生の時にはピアノを習っていたので、指を使うことには自信があります。ピアノの鍵盤のドの位置に母指(一般的にはおやゆび)を置き、上の音階のレの位置まで小指を開くことができ、開くだけでなくドとレを和した力強い音を出すことができます。プラモデルを作ることも好きだったので、戦艦大和の小さな機関砲も上手くくっつけることができました。つまり機能的にはなんの問題もないのに(先生も機能には影響しないとはお話ししておりましたが)、なぜ小指症などという名前をつけるのだろうと思いました。

大学を卒業して手術やさまざまな処置をするのに、この指が問題になったことはありません。また大学院で基礎研究を行っていた時も、細胞を培養する事や遺伝子の解析などの細かい作業をするのはむしろ得意とすることでした。

その後は外見よりも機能の重要性に気がつき、機能改善を目的とするリハビリテーションへの道に進むことになりました。

よく「外見よりも中身が重要」と言いますが、本当の意味でそれを理解する事はなかなか困難です。機能よりも外見を気にする患者さんも多く、その気持ちはよくわかります。そういうようなときには、「そうだよなぁ~」と思いながら自分の指を眺めています。

参考文献
※1. Temtamy SA, Aglan MS. Brachydactyly. Orphanet J Rare Dis. 2008 Jun 13;3:15.
doi: 10.1186/1750-1172-3-15.