京都大学医学部附属病院
リハビリテーション科 准教授

池口 良輔

Therapy Unit

京都大学医学部附属病院
リハビリテーション科
准教授

池口 良輔

日常生活における細やかな動きを可能にする手は、骨、軟骨、靱帯、腱、筋肉、神経、血管、皮膚などが整然と並び、それぞれが連動して働くことによって成り立っています。

脳における手の動きや感覚を司る領域は最も広く、複数の指を組み合わせて動かす際には脳の多くの領域を動員しています。
 また、幼少期には手からの刺激によって脳の発達が促されるなど、手と脳は相補的な役割を有しています。
 普段は手の重要性についてあまり認識されていませんが、その重要性に気付くのは外傷や疾病によって手の機能が障害された時です。精密な組織によって構成されているが故に、包丁で手を切るといった単純な外傷でも日常生活に対する影響は大きく、腱や神経などに損傷が及んでいた場合にはさまざまな生活上の支障をきたします。
 また脳卒中の際には麻痺によって手が動かないだけでなく、複数の指を協調して動かすことができなくなります。
 このため治療においては、損傷された一部の組織だけに治療を行うのではなく、その他の臓器や組織に対しても広範に治療を行わないと、「動くことのない手」になってしまいます。
 The Hand Center Kyotoでは、時にはミクロに、時にはマクロに手をとらえ、手の機能を最大限に発揮できる術について検討していきます。

京都大学医学部附属病院
リハビリテーション部 主任作業療法士

山脇 理恵

Therapy Unit

京都大学医学部附属病院
リハビリテーション部
主任作業療法士

山脇 理恵

「手」の手術をされる患者さんは私たち療法士にさまざまなことを語ってくださいます。

茶筅がリズムよく振れず美味しいお茶が点てられない
 化粧筆をやさしく持てず細かいお化粧ができない
 パンの生地を力強く捏ねられない
 食卓に彩りを添えるスナップエンドウのスジが摘めない
 それは、趣味や装い、職業、日常生活、役割など多岐に渡ります。
 お話を伺っていると、その方が日々の暮らしの中で大切に想っておられることが見えてくるように思います。
 機能の改善に限らず、たとえ元の状態に戻らなくても、道具や環境を調整し、工夫を凝らして、残された機能を最大限に活かしながら、新しい「作業」を作り出す、それぞれのリハビリテーションに伴走させて頂くことが療法士の務めです。
 The Hand Center Kyotoでは、療法士の視点から、「手」に関する情報を発信できればと考えています。

京都大学名誉教授・
日本手外科学会名誉会員

上羽 康夫

Development Unit

京都大学名誉教授・
日本手外科学会名誉会員

上羽 康夫

太古の人類は手で火を起こし、棒を使って身を守り、文字を書いて文化を伝えました。13~16世紀ルネッサンス期の優れた絵画や彫刻は手で制作され、18~19世紀の産業革命期に造られた織物、蒸気船、蒸気機関車などもすべて人の手で造られました。

言い換えれば、他の動物では叶わぬ文明・文化を人間の手は作り上げてきたのです。そんな、優れた能力を持つ人間の手の機能と解剖について、もっと知りたいと考えています。
 例えば、戦争や交通事故で手を喪失あるいは損傷した若者が、治療を受けてどのように手の機能を回復したのかを調べたり、現在のIT・AI社会ではパソコンやスマートフォンを頻繁に使用し、今までとは異なる手の障害が起こる可能性があることから、予測される手の障害と治療法についての情報を収集していきたいと思っています。
 The Hand Center Kyotoでは、手の機能と解剖、手の外傷や障害の治療法、今後発生するであろう手の障害に関する情報を収集し発信していければと思っています。